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前田成子氏フライブルク市経済観光公社(FWTM)業務代行。
(URL: http://www.eco-freiburg.com )市とFWTMのプロジェクトである「フライブルク市環境セミナー」の窓口及び担当として20年以上にわたり、日本からの行政、自治体、市民団体の視察の受け入れや環境政策に関するセミナーを実施している。
交通まちづくりトップ > 交通まちづくりコラム > 【第1回】公共交通の使いやすいまちづくり〜ドイツのフライブルクにおける事例紹介〜
ドイツの南西、スイス、フランスとの国境地帯に位置し、西側にライン河、東側に黒い森(シュヴァルツヴァルト)を
控え自然に恵まれたフライブルクは、人口21万人の都市で、ドイツで一番壮麗な美しい塔をもつと言われる
ミュンスター大聖堂を中心に中世の美しい街並みが広がり、ハプスブルガー家統治のオーストリア気風を
今でも偲ばせる典雅な趣のある街です。
現在では、「環境首都」として広く知られるフライブルクですが、1960年代にはマイカー人口の増加により
街の中心部で交通渋滞が深刻化し、排気ガスによる大気汚染や酸性雨による
森の樹木の枯死が問題となりました。また、人口の急増に伴う郊外の住宅地開発により、
住民の多くが街の中心から自然の豊かな郊外へ流出し人口が減り始めました。
こうした環境問題や街の衰退と1970年代に近郊で持ち上がった原発建設計画への反対運動による
環境意識の高まりを背景に、フライブルクでは交通施策をはじめとする様々な取り組みが行われてきました。
市庁舎や大聖堂があり街の中心となっている旧市街の直径約700mの範囲は、
1970年代から現在まで、歩行者ゾーンして商品搬入等の車以外の乗用車の乗り入れが
禁止されています。以前は渋滞がひどかったのですが、今では車を気にすることなく
安心して買い物を楽しむことができます。車のない街の雰囲気はゆったりとしていて、
石畳の上を歩くのも気持ちが良く、平日大聖堂広場では朝市が開かれ、
地域の旬の野菜や果物がおいしそうです。歩行者ゾーンでは一般の車は
通行できませんが、中心部には路面電車と歩行者だけが通行できる
トランジットモールが導入されており、街の中心まで公共交通機関で行くことができます。
路面電車沿線の市街地終点駅には、パークアンドライドという無料の駐車場が整備され、
郊外から車で来た人はそこへ車をとめ、路面電車に乗り換えて市街へ入るようになっています。
路面電車は乗用車よりも優先される事も多く、また旧市街では車の進入規制があるため、
車より早く旧市街に到着できます。 車両は低床になっていて、
乗り降りが簡単で高齢者等にも優しく、緑化された軌道を野原を走っているように静かにスムーズに走ります。
定期券は1ヶ月47ユーロで、市内だけでなく広域で各交通企業(ドイツ鉄道在来線、
民間バスや市の路面電車)全線で自由に使えます。定期券は人に貸すこともでき、
日曜・祭日は大人2人、子供4人まで乗れます。便利で快適な公共機関は、
車に代わる足として私たち市民の生活に欠かせないものとなっています。
また、環境にやさしい自転車の利用も奨励されており、
市内には全長約450kmの自転車走行網が整備されています。
これらは、車道を狭くしたり、道路の整備の際、歩行者道と自転車道を分離したりし、
また公園や農道、森林道も含めてネットワーク化し、自転車でまちを自由に通り抜け、
車と同じくらい早く移動できるようにしました。
通勤・通学を車から自転車に変えたという話もよく聞きます。
道路の脇には緑が多く植えられ自転車で走っていると気持ちがいいものです。
こうした取り組みとあわせて、街の中心部を活性化するための
取り組みも行われました。例えば、今では高級ブティックやカフェー・レストランが並び
お洒落な通りとなっているコンヴィクト通りは、以前は古くなって傷んだ
建物の通りでしたが、古い街並みを保存しつつ再開発が行われ、
現在ではチャーミングなショッピングストリートへと見事に変貌しています。
ここは私の好きな通りで、小川が流れ、春は藤の花がきれいです。
また、中世時代からある建物の中庭を素晴らしいショッピングアーケードとして
再生しているところもあります。
フライブルクにはこの様な活性化地域がいくつかあります。街中を流れる小川も私たちの気持ちを
和ませてくれます。これは街の成立時からあり、当時は用水(防火・庭用)として大切な役割を果たしていたものを、
現在では都市の美観対策として利用しているものです。新旧の調和を重視してつくられた古い美しい街並みは、
街を一層魅力的にし、買い物客に快適な空間を提供しています。
以前は、街の中心部には車があふれていた時期もあったと聞きますが、こうした様々な取りくみによって、
公共交通や自転車に乗る人が増えて街から車が減り、歩いていて楽しい街となりました。
中心部には人が集まるようになり活気が出てきました。大学都市にふさわしく学生達がカフェーに集い、
夏には小川も買い物客にとって憩いの場となりました。水に素足で入って遊ぶ子供達が見られます。
ストリートミュージシャンの奏でる音楽が石畳に響き、ショッピングが楽しいフォーラムです。
単に車を排除するのではなく、快適な空間や美しい景観を作る努力も実を結んでいると思います。
街の中心部は楽しいのです。
名古屋の街をより魅力的な街にするためには、どんなことが必要でしょうか。
街のしくみをつくるのは行政の役割ですが、市民の皆さん一人一人が街や移動のあり方を考え行動されることで、
はじめてそれは実現されるものだと思います。
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